大阪関西万博 EXPO2025-3
会場の中心にあるのは、静けさの森。人込みを離れて一歩森の中に踏み入れると、別世界が広がります。
シンボルになるものなどは全くなく、いわば「空」の状態で、このあたりにも今回の大阪関西万博のコンセプトが良く出ていると思います。
来訪者はほとんどパビリオンを見ることに心を奪われていて、この森の近くを通りながらも、わざわざこの森に立ち寄る余裕は無いようなので、それだけに、ほっと一息つける静かな場所となっています。
森の中には、オノ・ヨーコさん をはじめ何人かのアーティストの作品がさりげなく点在していますので、少し時間的な余裕を持ってアート作品を探し歩いてみるのも楽しいかもしれません。
欲を言えば、緑陰や池のほとりで、ゆっくり腰を降ろせるベンチ等の施設があれば、モアベターでした。



<共に生きる喜び> by トマス・サラセーノ
森の中の鳥や昆虫が交流するための装置として、12個のアート作品がワイヤーに吊られて浮遊しています。

<無限の庭園 祝福される多様性> by レアンドロ・エルヒッヒ
ぜひ近寄って、白い柵の中の植物を覗いたり、中央の通路に立ったりして、鏡に映る世界を体感してみてください。自分自身や植物や空が無限に広がっていくような不思議な感覚が体験できます。

<隠された植物たちのコミュニティー> by ステファノ・マンクーゾand PNAT
日が暮れてからがとりわけ美しいこの作品は、ちょっと説明を聞かなかればわからないのですが、「樹液が植物の幹を流れる音を科学的に変換し、音と光の作品に仕上げた」植物学者とアート作家のコラボレーション。
また、会場にはいくつかの休憩所やトイレ、ポップアップステージなどの共用施設が点在しています。これらの施設は1980年代以後生まれの建築家から公募で提案を募って、審査の上で選定されました。私達の子世代の若手建築家がこの万博という晴れ舞台での機会を与えられ、それぞれが独自に創意工夫をして設計したものばかりですので、注意して見てもらえれば、結構見ごたえがあるのではと思います。
ちなみに、余談ですが、役所広司がカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した映画「パーフェクト・デイズ」では、役所広司扮する清掃員の主人公が日々淡々と清掃作業を繰り返す様子が描かれていましたが、その舞台となったトイレもそれぞれが個性的なものでした。これらのトイレも実は、東京の公共トイレ建設のプロジェクトで選定された複数の建築家が設計したものだったのです。
今回の万博の共用施設は、基本的には仮設建築なので、そのことも踏まえたユニークな提案が揃っています。


上の写真2枚の建物は、施設が必要とする設備関係の機械を2階に持ち上げ、1階部分をオープンスぺースとして、休憩スポット等自由に利用できるように考えられています。このオープンスペースを利用してキッチンカーが設置されていて、通常はほとんど並ばずに軽食やドリンクが楽しめますので、おすすめです。
場所は静けさの森の近くです。

地面の一部を盛り上げて、その高い部分を基礎とし、上部に鉄筋で組んだ屋根を架けたユニークな構造の休憩施設です。トイレも隣接していますので、お孫さん等を遊ばせながらベンチで一息つける場所となっています。こちらも静けさの森の近くです。

鉄筋で組まれた格子に植栽がからみます

上の写真も若手建築家が設計した、シンプルな構造のポップアップステージ(西)。松葉葺きの屋根が丸太梁で支えられていて屋根はシーソーのように動く仕掛けです。梁の丸太は宙に浮いているように見えますが、良く見ると、両側2本の細いスチールの柱(支えのワイヤー付き)で支えられています。
この日はヴォーカル、ギター、ベースだけの3人組がグルーブ感のあるR&Bを聴かせてくれていました。
このようなポップアップステージは会場内に4箇所用意されていて、それぞれ個性的な設えで様々なパフォーマンスが楽しめます。

現地で直接「3Dプリンターで印刷された」という休憩施設 「森になる建築」。本体の素材は科学メーカーが新しく開発した樹脂製で、分解されて土に還るそうです。外壁には植物の種や古紙を混ぜた和紙が張られています。会期が終われば捨てられるのではなく、この地球上での循環を意識した建物ですね。開発したのは、ゼネコンの設計部門ではトップランナーと言える 竹中工務店。下の写真は施設の説明書です。


内部から見上げると、青い空と緑だけが望めて、ほっと一息つける空間。


暑い中で会場内を歩きつかれたら、西ゲート近くにある「氷の休憩所」(上の写真2枚)で一服して、帰りのシャトルバスや夢洲駅に並ぶために、もうひと踏んばりの英気を養いましょう。木の格子で覆われた建物の中に一歩足を踏み入れるとセミオープンな空間にもかかわらず、あまりの涼しさに感動します。日本古来の「氷室」から着想したと言う、ベンチの背後にある「氷パネル」の中には、夜間につくられた氷柱が何本も設置されていて、冷輻射 という仕組みで冷気を直接身体に感じることができます。
私が立ち寄った時は超満員で、皆さん一旦座ればなかなか動こうとせず(笑)、空いたベンチをゲットするのに苦労しました。こんな気持ちの良いクールスポットが、会場内に1箇所しかないのが残念でした。
建設したのは空調大手のダイキン工業との事ですが、今後このような 冷輻射技術 が事業化されて、より地球にやさしい空調設備が普及して欲しいものです。
<続く>
田中啓文
さすが建築好きの田中さんですね。写真の視点が建築家のそれで、なるほど、そういうふうに見るのかと感心します。暑い夏の色々なされていると思いますが、大阪らしいですね。
大久保均