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大阪関西万博 EXPO2025-5

今回は建物の構造や外壁素材の使い方が面白いパビリオンを4つ紹介します。ちょっと建築オタクっぽくなりますがお付き合いください!
NTTパビリオンの内部は3つのゾーンに分かれていて、マルチなスクリーンで音と映像による展示が楽しめます。
特に「ソーン2」では、IOWN(アイオン)という空間伝送技術をつかって、1970年万博の電気通信館跡地(電電公社の時代ですね)に設えられた特設ステージ上でのPerfume(女子3人組のヴォーカルユニット)のパフォーマンスが、まるでその場で行われているように、2025年のNTTパビリオンで体感できます。内部の観覧には予約が必要ですが、このPerfumeのダンスの足音なども含めたリアルタイムの臨場感は一見の価値ありかも!
内部の展示とは別に、4棟に分節した建物の間の外部は自由に出入りができるようになっています。
右側が建物の外壁、左側がさらに外側のスクリーンで、それぞれ異なる布の素材で覆われています。床部分から吹き出るミストで涼しげな空間に。
上部のトラス状の鉄骨と地面をつなぐ何本ものワイヤーは建物を軽量化するための構造体で、テンションのかかったワイヤーで建物本体の梁を吊り上げることによって、小さな部材で展示空間に適した大空間を実現しているそうです。これは何気ないことのようにも見えますが、「主要なテンション構造部材としてカーボンファイヤーを採用した日本初の事例(設計者による)」だそうです。万博を機会に、このような新しい試みがなされているのを見るのは、建築好きにとってはすこぶる楽しいものです。(ついついマニアックな話になってしまい、すんません。退屈であれば読みとばしてください)
外側のワイヤーの間に一枚一枚吊り下げられた布の詳細です。外が透けて見え一枚一枚が風を受けて動いて建物全体が揺らいでいるように見えます
ブルーオーシャンドーム(下の写真右側の建物)は3つのドームからなっています。写真対面の赤いボールは、これぞ大阪!吉本興業のパビリオン。
ブルーオーシャンドームの3つめのドームは誰でも自由に入れる場所となっていて、椅子にすわってイベントなどを楽しめます。
歩きつかれたら休憩がてら、一度立ち寄ってみてください。下はこのドーム屋根の写真ですが、何と。。全て「紙の管」でできています。建物が極限まで軽量化され、かつ回収・リサイクルがしやすい素材です。あの阪神大震災の時に「紙の教会」を造った坂茂さんの設計。
下の写真はパビリオンの入口にあたる一つめのドームですが、こちらは水の循環をテーマとした立体的なインスタレーションがあります。まるで生き物であるかのような水の動きにしばし見入ってしまいます。(予約要ですが、比較的予約は取りやすいと思います)
この一つめのドームの天井は「竹の集成材」で出来ています。これも新しい試みで、単体では割れやすい竹を集成材にすることで構造材として使えるようにしたものです。
上の写真は巨大な球体スクリーンで映像をみせる2つ目のドーム天井で、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)という新素材が使われています。
CFRPは、鉄の4分の1の重さでありながら強度は10倍もある、という次世代の素材で、「この規模のCFRTを構造として使うのは世界初(設計者による)」とのことです。3つのドーム共、建物の基礎をつくるために掘削する土の重さと建築全体が同じ重さになるくらいに構造部材を軽量化すること で地盤への負担を無くし、かつ解体・回収・リサイクル等が容易で、廃棄物を一切出さない建築の在り方が追求されています。
巨大な球体スクリーンに浮かび上がる地球の映像
下の写真は 飯田グループ×大阪府立大学共同出展館 ですが、メビウスの輪を連ねたような赤い花柄の不思議な外観が目を引きますね。近くを通ったらしげしげと眺めてみてください。外装はプリントなどではなく、本物の西陣織が膜材として使われています。150㎝巾の西陣織をつくれる織機を開発した京都の西陣織の老舗「細尾」とテント材大手の太陽工業が共同で、試行錯誤の末に製作したそうです。設計は、ポストモダンの時代に華々しく登場し、道頓堀にあった キリン会館 の設計などで名を馳せた 高松伸 氏。まだまだ健在です!こうした一人の建築家の突飛とも言えるような発想を皆が面白がり、専門業者としての技術力を存分に発揮して実現してしまうのは素晴らしいことですし、やはりこれも万博という舞台があってこそなのだと思います。
内部は未来の都市をイメージしたジオラマや人工的に光合成をおこなう技術の紹介などがあり、2階には会場を見渡しながら一息つけるカフェがあります。予約は比較的とりやすいようです。
ウーマンズパビリオン(下の写真)の外装を覆う白いトラス状の立体フレームは、設計者である永山祐子さんの提言で、前回の 2020年ドバイ万博日本館  から移設したもの。ここでも貴重な資源を無駄にしないという発想が生きています。リユースとはいえ今回の細長いパビリオンの形状に合わせて、部材を再構成するのに苦労したそうです。
パビリオンの中は、性別に関わらず誰もが平等に生きていける未来のために、女性たちの視点や経験を通して考える ような内容となっていますので、時間があれば、ご家族で一緒に訪れてみるのもよろしいかと思います。遅い時間であれば、予約無でも少し待つだけで入場することができます。
特に夜間は白いフレームや緑がライトアップされて綺麗です
2階にある天井が大きく繰りぬかれた庭園 の終了直前の様子
田中啓文

3件のコメント

  1. 田中さん、5回に亘り万博情報有難うございました。建築家ならではの視点で建物の構造やデザインの特徴を判り易く解説頂き大変参考になりました。私も万博に6月12日と26日の2回出かけました。12日は12時に入場しました。予約抽選で17時30分にNTTが当たってましたが当日抽選は当たらず、取り敢えず比較的空いてるパビリオンを見つけて並びました。ポーランド、コロンビア、ヨルダン、UAE、ポルトガル、ペルー、カンボジアの7館を体験する事が出来ました。ヨルダンの砂漠のさらさらの砂を裸足で体験する事ができました。NTTでは現状の顔写真からエージアップ、あるいはエージダウンした顔写真が映され大変面白かったです。19時に予約のサントリーのレストラン水空で食事をし、21時からのドローンショーも見る事が出来ました。26日は頑張って始発に乗り9時に入場しました。狙っていた住友館は既に入場打ち止めとなっており、アメリカ館、フランス館を体験しました。アメリカ館では55年前に見る事が叶わなかった月の石を見る事が出来ました。フランス館はラグジュアリーブランドのヴィトンやデイオールの展示ルームの様な設えでした。運よく当日抽選で大阪ヘルスパビリオンのリボーン体験が当たり25年後の自分の姿を見る事が出来ました。又体内年齢を計測できるコーナーもあり、私は77歳と診断されてショックを受けましたが逆に妻は17歳も若い46歳と診断されとても喜んでました。腹が立ちますよね!その後ベルギー、オーストラリア、シンガポール、インドネシア館を体験し18時頃退出しました。次は10月1日に行く予定です。前回の1970年の万博も3回位行きましたが、内1回は高津高校のクラス仲間と行った記憶がありますが、どのパビリオンに行ったかは思い出せませんがダイダラザウルスのジェットコースターに乗ってとても怖い思いをしたのは鮮明に覚えております。(笑)

    MRmotovei

    1. 中田さん、2回の来訪なのにたくさんのパビリオンを見られていて、さずがに精力的ですね
      また歳の差31歳のご夫婦とは、ある意味羨ましい。。
      私は暇やと思われそうで恥ずかしいので何回行ったかは言いませんが(笑)、建築や展示方法などが気になってしまい、肝心の展示の中身はよく覚えていないことも多いです

      そんな中で、展示自体に一番感銘を受けたのは、シグネチャーパビリオンの中の「EARTH MART」でした
      https://expo2025earthmart.jp/
      「地球人の食」について色々考えさせられる内容なので、機会があればぜひ覗いてみてください

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